フィジークという競技(後編)

ボディビルはご存知の方もフィジークという競技を知らない方も多いと思うので、簡単に紹介しておきたい。

ボディビル界で世界で一番有名なのは、アーノルド・シュワルツネッガーでしょう。

彼をイメージしてもらうのがわかりやすいと思いますが、全身の筋肉をくまなく鍛えることが重要で、圧倒的な筋肉量が必要となる。

その上で極限まで減量し、いわゆる皮一枚状態に仕上げていく。

審査としては基本8ポーズでの比較審査、数分間のフリーポーズによる審査などから順位を決めていく。

一方のフィジークは比較的新しい競技で、ボディビルはマッチョ界では当然カッコイイのだが、世間一般の感覚からすると筋肉がありすぎて逆に気持ち悪いというイメージもあり、そのアンチテーゼとして、誰から見てもカッコイイからだであることをテーマとしている。

カッコよさの基準はまず逆三角形であること。広い肩幅に細いウエストが最重要ポイント。ただ、ウエストも細いだけではなく腹筋の溝が深い方が良い。

また、衣装はサーフショーツなので、脚はほとんど審査対象に入ってこない。

ただし、細すぎるとサーフショーツがだぼだぼになってしまうので、人並み以上には鍛えている。

また、基本ポーズも2種類だけしかなく、フロントとバックだけ。フリーポーズもない。

 

ここまでは表向きの解説だ。ここからは若干裏事情になる。

 

まず、世界最高峰のコンテストであるMr.Olympiaのボディビル部門にエントリーしてくるレベルの選手はほぼ100%ステロイドを使用している。

このため、それこそアーノルド・シュワルツネッガーが現役だった時代に比べると、最近の出場者は明らかに筋肉量が増えている。

更に、ステロイドは全身の筋肉の筋肥大を促す。内蔵も筋肉の一種でできているので、これが肥大化する。コンテスト時なんて体脂肪率3%くらいのはずなのにお腹はボコッと出ているのが特徴だ。

シュワルツネッガーでさえそういった選手たちを「モンスター」だと言及している。

ボディメイク界がそんなモンスターだらになってしまっては、一般からの支持は得られにくいということでフィジーク部門が作られた。

エストの細さが最重要ポイントになっていることからもそういったボディビルのアンチテーゼになっていることがわかるだろう。

 

そんなフィジークも問題を抱えている。

それは審査のポイントが生まれつきの骨格にかなり依存してしまっている点だ。

まず、肩幅だが鎖骨の長さでほとんど決まっている。これは、骨格的な問題だ。

もちろん三角筋を鍛えて大きくすれば肩幅は大きくなる。だが、それでも骨格的に鎖骨が長い方が有利だ。

次にウエストの細さも骨格次第なのだが、肋骨がしまっていて胴囲が小さい方が有利。

もちろん皆さん極限まで減量してくるので、骨格として胴囲が小さいことは相当有利だ。

更に、顔が小さいと有利。

顔が小さいとそれだけで肩幅が大きく見えるし、全体的なバランスもよく見えてしまう。

 

つまり、フィジークはボディビルに比べて生来の要素が強く、そもそも自分の体が合っていないと、努力したとしても報われない可能性が高い。

その点ボディビルはとにかくビルドアップすれば、生来の要素を凌駕することができる。

こういった点ではボディビルに軍配が上がるな。